会社設立の登記申請が完了すると、申請した法務局によって日数が異なりますが、1週間から10日程度で登記が完了し、登記事項証明書や印鑑証明書が取得できるようになります。
1 登記事項証明書と印鑑証明書の取得します
会社の銀行口座を解説する場合、あるいは税務署等への設立届けには、登記事項証明書と印鑑証明書が必要となります。必要な枚数を取得します。
登記事項証明書は書面請求をすると、1通600円、印鑑証明書は1通450円します。また、登記事項証明書及び印鑑証明書は,請求の対象である会社・法人等がどこの登記所の管轄であっても,すべての登記所に対して請求することができます。
当事務所で、印鑑カード、印鑑証明書、登記簿謄本の取得を代行する場合は、実費のほか、代行手数料5000円(税別)が必要となります。
2 税務関係の届出をします
会社設立後は税務署、都道府県税事務所、市区町村への各種届出が必要です。
税務署
法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例及び納期限の特例に関する届出書、その他必要に応じ減価償却及び資産の評価関係の届出書及び消費税関係の届出書など。
法人設立届
法人を設立した場合には、設立後2ヵ月以内に定款等の写しや会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)などを添付した「法人設立届出書」を提出します。この届出書を提出すると、申告書などの税務関係の書類が税務署から送られてくるようになります(提出していなくても、税務署は登記を調べて送付してきます)。
提出する税務署は、会社の本店所在地を所轄する税務署になります。本店所在地の所轄税務署は、国税庁ホームページで調べることができます。
青色申告の承認申請書
複式簿記による正確な帳簿を備え付け、この帳簿を基礎として申告書を作成する青色申告法人には、税務上の特典が与えられています。
青色申告の特典には、欠損金が生じた場合にその欠損金額を翌期以降7年間繰り越すことができる青色欠損金の繰越控除、通常の減価償却費のほかに特別償却費の計上ができる特別償却制度や法人税額の特別控除などさまざまです。
これらの特典を受けるためには、設立後3カ月を経過した日と設立事業年度終了の日のいずれか早い日の前日までに「青色申告の承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。
申請は届出とは違い、税務署長から承認又は却下の処分を通知することになっていますが、承認の場合には通常通知は行われません。設立事業年度終了の日までに通知がない場合には、その日において自動的に承認があったものとみなされるので、設立事業年度から青色申告書での申告ができます。
給与支払事務所等の開設届出書
役員や従業員に対して給与を支払うことになると、給与に対して源泉徴収を行う義務が生じます。源泉徴収する義務が生じた場合には、給与等の支払事務を取り扱う事務所を開設した日から1カ月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を作成し、所轄税務署長に対して提出する必要があります。
源泉徴収した所得税額は、原則として支払月の翌月10日までに納付しなければなりません。納付期限までに納付しなかった場合には、不納付加算税が課されますので、忘れないようにしましょう。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与等に対する源泉所得税については、納付期限の特例が設けられています。1月から6月までに源泉徴収した所得税は7月10日に、7月から12月までに源泉徴収した所得税は翌年の1月20日に半年分をまとめて納付することが認められます。この制度は「納期の特例」と呼ばれており、適用を受けることができるのは、常時10人未満の従業員らに対して給与の支払いをするものに限定されています。したがって、納期の特例を受けていても従業員らの人員が常時10人以上となった場合には、その月より要件を満たさないことになりますので、原則どおり支払月の翌月10日までに納付することになります。
納期の特例の適用を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、適用を受けたい月の前月までに提出する必要があります。
今まで原則に従って納付をしていた給与支払者が、今後納期の特例を受けるために申請書を提出した場合、適用が受けられるのは、提出月の翌月に支払った給与の源泉所得税からになりますので、提出月に支払った給与等の源泉所得税は原則どおり、支払月の翌月10日までに納付する必要があります。
その他の届出書
ほかにも「棚卸資産の評価方法の届出書」や「減価償却資産の償却方法の届出書」などがあります。これらの届出書は、評価方法や償却方法が複数あり、法人の任意で選択できる場合に選択した方法を税務署長に届け出るための書類です。これらの届出書の提出期限は、設立事業年度の確定申告書の提出期限となっており、提出がなかった場合には、法定で定められた方法を選択したものとみなされます。
消費税関係の届出を行うかどうかは慎重に検討しなければなりません。資 本金が1000万円に満たない場合には、消費税納付義務が2年間免除される「消費税納税義務免除の特例」を利用しますが、「初年度 に設備投資を行う予定がある」、「輸出を行なう予定がある」等の場合には消費税が還付されることが可能性があります。この場合は、「消費税課税事業者選択届出書」 を提出するべきか否かをシミュレーションしてみて判断する必要があります。他の士業の事務所では当然対応できませんし、決算期が到来してから税理士事務所に相談しても後の祭りです。
都道府県税事務所・市区町村
法人の場合には、国税である法人税だけではなく、地方税の住民税や事業税の納税義務がありますので、税務署だけでなく、都道府県の税務事務所や市町村にもこの「法人設立届出書」を提出する必要があります。東京23区の場合は、都税事務所に法人設立出書を提出します。
3 社会保険、労働保険への加入しなければなりません
会社は、社会保険への加入義務があります。また、労働者を1人でも雇用すれば、労働保険にも加入する必要があります。なお、役員だけの場合は、労働保険には原則として加入できません。
社会保険は、医療機関で受けられる医療保険と、老後等の生活に備えるための年金保険の2つから成り立っています。個人事業主の場合は、国民健康保険+国民年金でしたが、会社役員、従業員は、健康保険+厚生年金保険になり、両者を併せて社会保険と呼びます。
健康保険になると給付は?
健康保険と国民健康保険との間では、支払われるもの(給付)の多くが共通しています。医療機関で診療を受けたときの療養の給付はどちらも原則7割(病院窓口で3割のみ負担)ですし、出産育児一時金もともに42万円(平成21年10月より、産科医療補償制度に加入する医療機関等において出産した場合)です。
大きな違いは、健康保険には傷病手当金があることです。これは、業務外の理由で働けなくなったときの所得保障の役割を果たします。療養のため労務不能になったとき、4日目からが支給の対象とされます。支給額は、標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1)の3分の2です。
また、傷病手当金のほか、産前42日間・産後56日間の女性に対しては、出産手当金も支給されます。
健康保険における被扶養者の範囲は?
ご夫婦で事業を営んでいた場合、法人化に伴って、夫が代表取締役、妻が取締役に就任するケースがあるかと思いますが、妻が健康保険上、夫の扶養に入れる(被扶養者)か否かは、2つの条件によります。
まず、妻が常勤役員であり、1日の勤務時間数・月の出勤日数どちらにおいても夫の4分の3以上勤務していると、妻自身も被保険者になります。一方、上記の勤務時間・日数基準を満たさない場合は、非常勤役員として被保険者に該当しないことになります。
次に、妻が非常勤役員である場合、妻の年収が130万円(60歳以上又は障害者は180万円)未満でかつ夫の年収の2分の1未満ですと、原則として夫の被扶養者になります。所得税における扶養控除の基準は103万円ですが、健康保険における基準は130万円と異なります。
したがって、健康保険上、妻が夫の被扶養者になるには、①勤務時間・日数が夫の4分の3未満で、かつ、②年収が130万円未満・夫の2分の1未溝という両条件を満たす場合です。
年金の受給額はどうなるか?
厚生年金保険は国民年金保険と同じく、被保険者が老齢・障害・死亡のときに、被保険者または遺族に対して支払われます。一般に、厚生年金保険は国民年金保険より、支給額が多くなります。たとえば、国民年金のみで25年加入した場合の老齢基礎年金額は約50万円ですが、厚生年金保険のみで25年加入した場合の老齢厚生年金額は約110万円です(標準報酬月額30万円の場合)。
保険料の負担額は?
社会保険の保険料率は、平成25年4月時点で、健康保険料率9.97%(東京都、協会けんぽの場合)・厚生年金保険料率16,766%です。この半分を会社が負担し、半分を被保険者が負担します。「標準報酬月額表」に役員報酬額を当てはめますと、実際の保険料額がわかります。なお、協会けんぽの健康保険料は都道府県ことに若干異なります。
一方、国民健康保険の保険料は、前年の年収による所得割などの4要素から市区町村により決定されることが一般的です。また、国民年金保険料は月額15,040円(平成25年度)です。
社会保険に加入すると、会社負担分保険料と本人負担分保険料との合計額が毎月講求されます。仮に役員報酬を50万円とすれば、その約25%にものぼる額となります。